東京大学大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻 喜多研究室
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研究内容




当研究室では,省エネルギー社会に大きく貢献するための機能性材料とその界面の制御,さらに実用化へ向けた応用研究を行います。中でも現在は,以下のような研究テーマに注力しています。

高効率電力変換デバイスの要素技術と高性能化
パワーデバイスは,電力利用のあらゆる過程の変換に用いられるので,その性能が社会全体の電力利用の効率に直結します。材料とプロセスの革新によってその高性能化を達成すれば大きな省エネルギー効果が期待できます。当研究室では,パワーデバイスの動作時の熱的なエネルギー損失を低減する切り札として,SiCデバイスに着目,その画期的な高性能化を目指して研究を行います。

1. パワーデバイス用 SiC-MOSFETの要素技術
- SiC MOS界面の欠陥低減技術の開発
- SiC上への酸化物薄膜形成過程の高精度解析と,界面の微視的構造の理解
- SiC/メタル界面に生じるエネルギー障壁の制御手法の開発

SiCとゲート絶縁膜SiO2の界面では,熱酸化の副生成物の炭素が界面の形成を阻害し界面欠陥の原因となります。炭素をいかに速やかに界面から排出するかが大きな課題と考えられます。当研究室では,酸化反応条件の制御によってCO排出を促進することが重要になると考え,ナノ膜厚領域での酸化過程について高精度な解析を進めています。

   
 ▲ SiCの熱酸化によるSiO2成長の模式図。界面欠陥の抑制が必要。 ▲ 4H-SiC(0001)面上のナノメートル領域での熱酸化過程を解析すると界面反応律速モデルに従う。(X線反射率を用いたナノ膜厚高精度計測)

当研究室では,熱酸化条件を制御することで,世界で初めて熱酸化だけで4H-SiC上で界面準位密度を1011cm-2eV-1以下へ低減する熱酸化手法を開発しました。4H-SiC(0001)上で得られる界面準位としては世界最小レベルであり,MOSキャパシタの特性は理論計算によって期待されるものに近付くことを確かめています。
   
 ▲ 4H-SiC(0001)面上のMOSキャパシタのC-V (capacitance-voltage)特性。周波数分散は小さく,点線で示す理想特性に近い特性が観察される。 ▲ 4H-SiCの熱酸化界面における界面準位密度を過去の報告値の代表的なものと比較。当研究室にて4H-SiC(0001)面上の世界最小レベルを実証(2014年7月25日 プレスリリース)。

熱酸化によって形成されたSiCとゲート絶縁膜SiO2の界面には,歪んだSiO2が成長します。この界面遷移層の形成により,格子が不整合でありながらも欠陥密度の低い界面が実現しています。界面の本質的な特性を決定する重要な因子の理解のためには,SiC MOS界面構造の詳細な物理解析が不可欠です。
   
 ▲ SiC上の熱酸化膜の構造が界面近傍の数nmで大きく変化するため,格子振動ピークの大きなシフトが検出される(FTIR-ATR解析)。 界面から〜nm程度の領域に着目すると,SiC上の熱酸化膜の構造は結晶面に強く依存する。格子振動ピークのシフト量は(0001)面と(000-1)面で大きく異なることを発見した(FTIR-ATRの膜厚依存性)。

プレスリリース:当研究室の研究成果が紹介されています。
科学技術振興機構(JST)ウェブサイト (2014年7月25日)
東京大学大学院工学系研究科ウェブサイト (2014年7月28日)

UTokyo Research ウェブサイト (2014年8月6日)



次世代超低消費電力デバイスのためのマテリアル設計
情報端末が世界中で普及し,電子デバイスの消費電力低減による省エネルギー化が急務です。従来とは異なる動作原理を利用しながら,超低消費電力で動作可能な新しい素子実現を目指し,材料と界面の基礎的な研究からデバイス設計までの研究を行います。

2. 強磁性体ナノ薄膜の磁化制御技術
- 電界効果による強磁性体ナノ薄膜の磁気異方性の制御
(IBM T. J. Watson Research Centerとの共同研究)
- 電界の誘起する強磁性体薄膜の磁気異方性の不揮発的変化とその応用

強磁性体の電子デバイス応用では垂直磁化膜が有用であるため,界面磁気異方性の効果の顕在化する〜1nmまで極薄膜化された強磁性体の利用が注目されます。中でも高性能MTJの実現には,酸化物/強磁性体金属の界面磁気異方性が重要ですが,これは界面を構成する元素や界面構造で敏感に変化します。当研究室ではこの界面の性質を決定する因子を探り,界面磁気異方性の制御のための技術指針を探っています。
また,酸化物/強磁性体金属の界面に対して電界を印加すると,界面磁気異方性が変化する現象が見られます。この効果をうまく利用すれば超低消費電力で書き換えが可能なメモリー素子など,新しい方式のスピントロニクス素子が期待できます。本研究室ではこの効果を増大させるための界面設計について調べています。

 
 ▲ MgO/CoFeB (〜1nm)/Ta スタックの熱処理による深さ方向プロファイルの変化。Taの拡散が進行すると界面磁気異方性に影響が大きい。(HR-RBS測定による解析) ▲Ru/Al2O3(10nm)/MgO(1nm)/CoFeB (1.2nm)/Ta素子の磁化特性の電圧印加による変化。面外方向の磁場に対する応答を,RuとTaの間に-8V印加と+6V印加の場合について比較した。(IBM T. J. Watson Research Centerとの共同研究)

3. ゲート絶縁膜の物性と界面の物理 (鳥海研究室との共同研究)
- 高誘電率ゲート絶縁膜(High-k材料)の高誘電率化設計と物性制御
- 酸化物界面に生じるダイポール効果の発現機構解明と,閾値制御への応用

2つの異なる酸化物の界面で,絶縁体同士の界面であるにも関わらず,”界面ダイポール効果”によって電子のエネルギー障壁が現れることがあります。この界面効果は,トランジスタの閾値を変えるなど,MOSデバイスの特性に対して大きな影響があります。この制御の指針の確立を目指して,ダイポールの物理的な起源の解明を目指しています。

 
 ▲High-kとSiO2の界面に形成されているダイポール層のイメージ(High-k側からSiO2側へ向かうダイポールの場合)。 ▲ High-kとSiO2界面に現れる界面ダイポール効果の大きさは,High-k材料中の酸素原子の密度と相関することが分かっている。つまり,High-k酸化物の微視的構造がダイポール効果を決定する重要な因子の1つとなっている。

4. 酸化物薄膜の欠陥構造のデバイス応用
- 電気化学的制御を用いたエレクトロクロミック素子の材料設計


 
 東京大学大学院工学系研究科 喜多研究室